改正物流効率化法のうち、一定規模以上の事業者を対象にした「特定事業者」の義務は2026年度から始まっています。担当者がまず知りたいのは、「自社はそもそも対象なのか」と「対象なら何を作って、何を報告するのか」の二点でしょう。この記事では、国土交通省の「物流効率化法」理解促進ポータルサイトに沿って、該当の見分け方と、中長期計画・定期報告に向けて揃えておく材料を整理します。
法律の全体像(努力義務の中身や、荷待ち時間の算定方法の要点)は物流効率化法とはで扱っています。ここでは特定事業者の側に絞ります。
根拠となる制度:努力義務と特定事業者の義務の二段構え
物流効率化法は、何も対策を講じなければ輸送力不足が生じる可能性を踏まえ、物流の持続的な成長を図るために、荷主・物流事業者に対する規制的措置を定めた法律です。措置は二段に分かれています。
| 段 | 対象 | 内容 | 実施時期 |
|---|---|---|---|
| 一段目 | すべての荷主・物流事業者 | 物流効率化のための取組の努力義務 | 2025年度から |
| 二段目 | 一定規模以上の特定事業者 | 中長期計画の作成や定期報告等の義務 | 2026年度から |
一段目の努力義務は、積載効率の向上等・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮の三つの取組です。「物流効率化の推進に関する基本的な方針」では、その目標の一つとして 1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内にする ことが示されています(取組と目標の詳細は物流効率化法とはを参照)。
特定事業者の中長期計画や定期報告は、この一段目の取組を、規模の大きい事業者について計画と報告の形で国に示させる仕組みだと捉えると、全体がつかみやすくなります。
特定事業者に当たる条件
特定事業者は、物流全体への寄与がより高いと認められる事業者を、次の基準値で指定します。
| 区分 | 指標 | 基準値 |
|---|---|---|
| 特定荷主・特定連鎖化事業者 | 取扱貨物の重量 | 9万トン以上 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数 | 150台以上 |
| 特定倉庫業者 | 貨物の保管量 | 70万トン以上 |
見分けるときのポイントは、区分ごとに測る指標が違うことです。
- 荷主(発荷主にあたる第一種荷主、着荷主にあたる第二種荷主)と連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)は、取扱貨物の重量で判定します
- 運送事業者は、保有車両台数で判定します
- 倉庫業者は、貨物の保管量で判定します
一つの会社が複数の立場を持つことは珍しくありません。たとえば荷主として運送を委託しながら、倉庫業として他社の貨物を預かって保管している会社は、重量と保管量の両方を確認する必要があります。「うちは運送会社ではないから関係ない」と考える前に、自社が荷主・倉庫・運送のどの立場で物流に関わっているかを書き出すところから始めるのが確実です。
算定の細かな方法や届出の手続は、ポータルサイトの「特定事業者の指定」のページに示されています。自社の数値が基準値の近くにある場合は、自己判断で済ませず、このページと関係法令で確認してください。
特定事業者になると求められること

ポータルサイトは、特定事業者に関わる項目として次の六つを挙げています。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 特定事業者の指定 | 基準値以上の事業者を特定事業者として指定する |
| 中長期的な計画の作成 | 物流効率化の取組を計画として作成する |
| 物流統括管理者(CLO)の選任 | 物流を統括する管理者を選任する(対象となる区分は限られる) |
| 定期報告 | 取組の状況を定期的に報告する |
| 勧告及び命令 | 取組が不十分な場合の国の措置 |
| 報告徴収及び立入検査 | 国による報告の求めや検査 |
CLO の選任が義務づけられる区分は限られているので、自社の区分で必要かどうかを物流効率化法とはやポータルサイトで確認してください。どの区分でも実務の中心になるのは、中長期計画と定期報告です。荷待ち時間等(荷待ち時間と荷役等時間を合わせた呼び方)の削減に向けた中長期計画を策定し、その進捗状況を定期的に国へ報告する、という組み立てになっています。計画は「これから何をするか」、報告は「実際にどうなったか」 を示すもので、両者は対になっています。
このほか、ポータルサイトでは重要事項として「取組結果の公表」「評価制度」「荷待ち時間や荷役等時間の算定方法」が挙げられています。報告した内容が評価や公表につながり得る以上、報告の数字は後から説明できる根拠を持っている必要があります。
運用上の注意
計画と報告を形だけで終わらせないために、押さえておきたい点が四つあります。
一つめは、計画と報告を同じ物差しで書くことです。計画で示した現状値と、報告で示す実績値が別の方法で測られていると、改善したのかどうかを誰も判断できません。荷待ち時間と荷役等時間の算定方法は国が示しているので、拠点ごとに記録のルールを合わせておくことが前提になります。
二つめは、記録を人手に頼りすぎないことです。物流現場では、いまも荷待ち時間等を手書きや口頭で管理しているケースが多く、正確かつ継続的に把握することが難しいという課題があります。報告は一度きりではなく続くものなので、書き取る負担は年を追うごとに効いてきます。
三つめは、目標値を物差しに使うことです。基本方針が示す「1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内」は、拠点側にとって分かりやすい到達点です。自社の現状がこの目安からどれだけ離れているかを把握できれば、計画に書く打ち手の優先順位も決めやすくなります。
四つめは、様式と手続を一次情報で確かめることです。ポータルサイトでは、2026年8月28日に建設業を営む事業者向けの中長期計画の記載事例が公開され、荷主・物流事業者や特定貨物自動車運送事業者を対象とした説明会も案内されています。提出の期限や様式は変更や特例があり得るので、社内資料や二次情報だけで判断せず、最新のお知らせと関係法令を確認してください。
TruckCALL での対応
TruckCALL™ は、受付・呼び出し・荷役の開始と終了といった各時刻データを自動で記録しています。2026年4月7日からは、これらのデータから荷待ち時間と荷役等時間を自動で算出する機能を、契約中のお客様に追加料金なしで提供しています。
- トラックの受付・呼び出しから荷役完了までのデータをもとに、荷待ち時間等をワンクリックで自動算出
- 一元管理されたデータは、希望の期間を指定してCSV形式でダウンロードできる
- 時間帯別の平均台数や待ち時間の傾向を統計グラフで把握できる
中長期計画と定期報告の観点で効くのは、三つめの統計グラフです。計画を立てる段階では「どの時間帯に車両が集中し、どれだけ待たせているか」という現状を示す材料になり、報告の段階では同じグラフを期間を変えて並べることで、取組の前後で傾向がどう変わったかを示す材料になります。計画と報告を同じデータから作れるので、一つめの注意点である「同じ物差し」を保ちやすくなります。
実際の現場では、建設仮設資材のキョーワ株式会社様が、以前は手書きの記録が中心で車両台数や待機時間を十分に把握できていなかったところから、各センターの車両台数、受付から待機完了・接車までの時間、車両の大きさなどを確認できるようになりました。そのデータをもとに「この支店には何人必要か」「この時間帯は人を増やすべきか」を判断しており、全国主要センターの平均待機時間は約2時間から約30分へ短縮されています(導入事例)。
また、ミライリスホールディングスグループのマツオカ建機株式会社とアシタル株式会社は、紙と電話・口頭による受付では正確な荷待ち・荷役時間の記録が難しいという課題を抱えていました。物流効率化法の改正を見据え、呼び出し業務の効率化と荷待ち・荷役時間の可視化を目的に TruckCALL を導入しています(導入事例)。
受付の運用そのものをどう組むかはバース予約の運用設計で扱っています。記録の仕組みが計画や報告を代わりに書いてくれるわけではありませんが、現状値と実績値を同じ方法で残し続けることは、特定事業者の義務に向き合ううえでの土台になります。
