「荷待ち時間は記録しなければならない」と聞いても、誰が、何を、どれだけの期間残すのかまで正確に言える人は多くありません。物流効率化法の改正で荷待ち時間が注目されるようになりましたが、業務記録(旧・乗務記録)への記載そのものは、それより前からトラック運送事業者に課されている義務です。この記事では、国土交通省・厚生労働省の公表資料に沿って、記録義務の根拠、対象と保存期間、運用で気をつけたい点を順に整理します。
根拠となる制度:貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条
荷待ち時間の記録義務の根拠は、貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第8条です。この条文は運転者等ごとの業務の記録(業務記録。以前の呼び方は乗務記録)について定めていて、国の運用は「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について(2003年3月10日)」の第8条で示されています。
義務を負うのはトラック運送事業者です。荷主ではありません。ただし、経済産業省・農林水産省・国土交通省が2023年6月に出したガイドラインでは、荷主事業者にも出荷・入荷に係る荷待ち時間と荷役作業等の時間を把握することが「実施が必要な事項」として挙げられています。運送事業者は記録する義務、荷主は把握する取り組み、と役割が分かれていると考えると整理しやすくなります。
この記録義務は、段階的に広がってきました。
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 2017年7月 | 荷待ち時間等の業務記録への記録を義務付け | 国土交通省 ガイドライン(建設資材物流編) |
| 2019年6月 | 荷役作業等の記録を義務付け | 同上 |
| 2024年10月 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則を改正 | 厚生労働省 ポータルサイト |
| 2025年4月 | 記録義務の対象を全ての車両に拡大 | 同上 |
記録が必要になる条件と保存期間

現行の第8条第1項は、貨物自動車運送事業者に対し、運転者等ごとに業務の記録をとらせ、その記録を1年間保存しなければならないと定めています。荷待ちと荷役に関わるのは次の2つの号です。
| 号 | 記録が必要になる場合 | 記録する事項 |
|---|---|---|
| 第7号 | 荷主の都合により、集貨または配達を行った地点(集貨地点等)で待機した場合 | 集貨地点等/荷主から到着日時を指定された場合はその日時/到着した日時/積込み・取卸し(荷役作業)の開始と終了の日時/附帯業務を行った場合はその開始と終了の日時/出発した日時 |
| 第8号 | 集貨地点等で荷役作業または附帯業務(荷役作業等)を行った場合 | 集貨地点等/荷役作業等の開始と終了の日時/荷役作業等の内容/これらについて荷主の確認が得られたかどうか |
第8号には、荷主との契約書に実施した荷役作業等がすべて明記されている場合は、要した時間が1時間以上のときに限るという限定が付いています。
保存期間は「1年間」 です。2023年6月のガイドラインも「最低1年間は保存する」としています。
対象車両は、当初は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両に限られていました。厚生労働省のポータルサイトによると、2024年10月に貨物自動車運送事業輸送安全規則が改正され、2025年4月から全ての車両に対象が拡大されています。小型車の運行を多く抱える事業者にとっては、記録の対象が大きく増えたことになります。
なお、第8条の条文そのものに「30分」という数値は出てきません。基準は解釈通達「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」にあり、第7号については、集貨地点等に到着してから出発するまでの時間から業務と休憩の時間を除いた待機時間が30分未満の場合、記録を省略して差しつかえないとしています。荷主の都合で30分以上待たせた場合は、車両の大きさに関係なく業務記録に残す対象です。2023年6月のガイドラインにある「荷主都合による荷待ち時間が30分以上あった場合」という記述も、この扱いと一致しています。
「荷待ち時間」の数え方
記録する以上、何を荷待ち時間と呼ぶかを揃えておく必要があります。同じガイドラインは、荷待ち時間を「集貨又は配達を行った地点における到着日時から出発日時までの時間のうち、業務(荷積み、荷卸し、附帯業務等)及び休憩に係る時間を控除した時間」と定義しています。
また、荷主が把握する荷待ち時間については、物流事業者都合による早期到着などは荷主による把握や削減が難しいため、荷主都合による荷待ち時間を把握することとされています。物流効率化法で使う「荷待ち時間」と「荷役等時間」の算定方法については、物流効率化法とはで整理しています。
運用上の注意
記録義務そのものは運送事業者のものですが、実際に運用するとつまずきやすい点がいくつかあります。
一つめは、第7号の事項を「日時」でそろえることです。 第7号が求めるのは、到着、荷役作業の開始と終了、出発といった日時です。待った時間を分数で書くだけでは、どこで待ったのかを後から分けられません。記入する人や見る時計がばらつくと、記録の精度がそろわず、比較の信頼性が下がることがあります。
二つめは、「最低1年間」は上限ではないことです。 ガイドラインの表現は「最低1年間は保存する」です。荷主との運賃・料金の交渉や、荷待ちの削減効果の検証に使うなら、1年を過ぎた記録も残しておく方が比較の材料になります。
三つめは、記録するだけでは荷待ちは減らないことです。 物流効率化法が掲げる削減目標は物流効率化法とはで整理したとおりです。業務記録は運送事業者の手元に残りますが、削減の打ち手を持つのは多くの場合、受け入れる側の拠点です。
荷主も無関係ではありません。第8号の記録事項には、記録内容について荷主の確認が得られたかどうかが含まれており、運送事業者の記録について荷主が確認を求められる場面があります。そのとき荷主の側に自前の記録がなければ、内容が正しいかを確かめる手段がありません。2023年6月のガイドラインも、荷主事業者に荷待ち時間と荷役作業等の時間の把握を求めています。運送事業者の記録と、荷主側で取った受付・荷役の時刻を突き合わせられるようにしておくと、どこで待たせているかの話が具体的になります。
TruckCALL での対応
TruckCALL™ は、受付・呼び出し・荷役の開始と終了の各時刻をシステム上で自動で記録します。記録した時刻から荷待ち時間と荷役等時間を分けて自動で算出できるだけでなく、期間を指定して CSV で出力したり、時間帯別のグラフで待ちが集中する時間帯を確認したりすることができます。
これらの時刻は、第7号が記録事項に挙げる「到着した日時」「荷役作業の開始及び終了の日時」と同じ種類のものです。
業務記録を作る義務は運送事業者にあり、TruckCALL の記録がそれに代わるわけではありません。それでも、受け入れる拠点の側にも時刻の記録があれば、運送事業者の業務記録と照らし合わせて、どの時間帯に待たせているかを具体的に話し合えます。ただし、受付の時刻と実際に到着した時刻は一致するとは限りません。照らし合わせる前に、どの時刻を「到着」とみなすかを運送事業者とすり合わせておく必要があります。
建設仮設資材のキョーワ株式会社様では、以前はドライバーによる手書きの記録が中心で、車両台数や待ち時間を十分に把握できていなかったといいます。導入後は、受付から待機完了・接車までの時間や車両の大きさを確認できるようになり、その数字をもとに拠点ごとの人員配置を調整しています。
まとめ
- 荷待ち時間の記録義務の根拠は、貨物自動車運送事業輸送安全規則 第8条。義務を負うのはトラック運送事業者
- 2017年7月に始まり、現行の条文では記録を1年間保存しなければならない
- 対象車両は当初、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上。2025年4月から全ての車両に拡大された
- 荷主にも、荷主都合の荷待ち時間を把握する取り組みが求められている
- 記録は削減と交渉の材料。比較できる形で、1年を超えて残すことも検討したい
