「2024年問題」という言葉は、物流の現場で毎日のように聞くようになりました。ただ、2024年問題は法律の名前ではなく、ある規制が招く状況の呼び名です。この記事では、言葉の定義、問題が起きる仕組み、物流効率化法などとの違い、そして自社の荷待ちとどう関係するのかを順に整理します。
2024年問題の定義
2018年7月に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」で、時間外労働に罰則付きの上限規制が導入されました。自動車の運転業務には、改正法の施行から5年後となる2024年4月1日から、年960時間の上限規制が適用されています(国土交通省のガイドライン 建設資材物流編)。
NX総合研究所は、この上限規制が適用され、拘束時間等の管理が強化されることで物流が停滞するおそれがあることを「2024年問題」と説明しています。つまり規制そのものではなく、規制を守りながら今と同じ量を運べるのかという問いを指す言葉です。
2024年問題が起きる仕組み
国土交通省のガイドラインは、労働基準関係法令や「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)の違反が高い水準で推移している中では、上限規制を守りながら現在と同じ水準の物流を確保するのは困難と述べています。

仕組みを分けると、次の三つが重なっています。
- 一人が働ける時間に上限がかかった。 時間外労働が年960時間までに抑えられ、上限を超える時間外労働に頼っていた運行は、同じ組み方を続けられなくなる
- 担い手が減っていく。 ガイドラインは、産業の中核を担う45歳から59歳のドライバーが今後退職していくと、新たななり手が現れないままでは人手不足が一層深刻になるとしている。日本ロジスティクスシステム協会は、何も対策を講じなければ 2030年には需要全体の35.9%が運べないという推計を示している(同ガイドラインが引用)
- 運転以外の時間にも改善の余地がある。 ガイドラインは、人手不足の解消には荷待ち時間等のムダの排除や荷役作業の効率化が必要で、それは荷主の協力なくしては実現しえないとしている
三つめが、荷主や物流センターが当事者になる理由です。国の基本方針では、目標としてトラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間の短縮を掲げ、その中身を「1運行の荷待ち時間・荷役等時間を2時間以内、1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内」としています(物流効率化法 理解促進ポータルサイト)。待つ時間と積み下ろしの時間を縮めて、拘束時間を減らすという考え方です。
物流効率化法や似た言葉との違い
2024年問題と一緒に語られる言葉は多く、混ざりやすいところです。違いを表にまとめます。
| 言葉 | 何を指すか | 誰に向いているか |
|---|---|---|
| 2024年問題 | 時間外労働の上限規制で物流が停滞するおそれ(状況の呼び名) | 物流に関わるすべての関係者 |
| 時間外労働の上限規制 | 自動車の運転業務は年960時間(2024年4月1日から) | ドライバーを雇う事業者 |
| 物流効率化法の努力義務 | 積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮に努める(2025年度から) | すべての荷主・物流事業者 |
| 物流効率化法の特定事業者の義務 | 中長期計画の作成や定期報告など(2026年度から) | 一定規模以上の事業者 |
上限規制が直接かかるのはドライバーを雇う側ですが、物流効率化法は荷主にも荷待ち時間の短縮を求めています。制度の全体像は物流効率化法とは、一定規模以上の事業者の義務は特定事業者の中長期計画とはで扱っています。
もう一つ、「荷待ち時間」と「荷役等時間」は別の区間です。ポータルサイトでは、荷待ち時間を「ドライバーが到着した時間から荷役等の開始時間までの待ち時間」、荷役等時間を「荷役(荷積み・荷卸し)等の開始から終了までの時間」としています。受付や呼び出しの仕組みで縮められるのは、主に前者です。
なお、NX総合研究所は建設業界でも関係者に時間外労働の上限規制が適用され、建設業界の「2024年問題」 が危惧されているとしています。同じ言葉でも、業界によって指す対象が違う点には注意が要ります。
2024年問題という言葉はどう使われているか
行政の資料では、2024年問題は荷主と運送事業者が一緒に取り組む理由として使われています。国土交通省は、荷待ち件数が特に多かった加工食品、建設資材、紙・パルプの3分野について、輸送品目ごとに懇談会を開き、分野別のガイドラインをまとめました(2020年5月29日 報道発表)。
建設資材物流編では、工事現場で天候や道路事情によって搬入計画どおりに進まなくなると、荷卸しスペースにトラックが集中して荷待ちが発生することが課題に挙げられています。荷待ちを減らす制度も段階的に整えられてきました。ガイドラインによると、荷待ち時間等の記録の義務付け(2017年7月)、荷役作業等の記録の義務付け(2019年6月)に加え、2018年12月公布の改正貨物自動車運送事業法で荷主の配慮義務が新設されています。違反原因行為の例には「荷主都合による長時間の荷待時間を恒常的に発生させているような行為」が挙げられています。記録の扱いは荷待ち時間の記録義務とはで詳しく整理しています。
ガイドラインはさらに、発荷主がいくら改善に取り組んでも着荷主の協力が得られなければ十分な効果は得られないとしています。2024年問題は、運送会社だけでなく、トラックを受け入れる側の問題でもあるということです。
TruckCALL での実例
建設現場の安全ネットやメッシュシートなどの繊維仮設資材を扱うキョーワ株式会社様は、全国の拠点に TruckCALL™ を導入しています。上で触れた「建設資材」の分野にあたる現場で、キョーワ様の指標である平均待機時間を約2時間から約30分に縮めた短縮事例です。
導入前のセンターでは、多い日で1日最大100台ほどのトラックが出入りし、受付待ちが20台ほどになることもありました。敷地内に待機場所が無く、順番待ちの車両が路上に並び、国道に面したセンターでは警察から注意を受けることもあったといいます。 TruckCALL では、ドライバーが LINE で受付し、順番が来たら呼び出しを受け取ります。導入後の成果は次のとおりです。
- 全国主要センターの平均の待ち時間: 約2時間から約30分へ、75%短縮
- 路上に行列ができていたセンターの周辺で路上待機するトラック: 0台
- 近隣クレーム: ゼロ
- キャンセル率と立ち去り率の合計: 約1%
同社は、ドライバーの業務時間に関する規制が厳しくなる中、運行時間を計算しながら待ち時間を有効に活用している方もいると話しています。各センターの混雑状況を確認できるようになり、ドライバーにとっても時間を管理しやすい受付方法になっているとのことです。
もう一つの変化は、待ち時間が数字で見えるようになったことです。以前は手書きの記録が中心で、車両台数や待ち時間を十分に把握できていませんでしたが、導入後は受付から接車までの時間などを確認できるようになりました。2024年問題への対応は、まず自社の荷待ちを測るところから始まると言えます。
まとめ
- 2024年問題は、自動車の運転業務に年960時間の時間外労働の上限がかかったことで、物流が停滞するおそれを指す呼び名
- 国は荷待ち時間・荷役等時間の短縮で拘束時間を減らす方針を取り、物流効率化法で荷主にも努力を求めている
- トラックを受け入れる側にとっては、到着から荷役開始までの荷待ちをどう縮めるかが具体的な論点になる
