バース予約システムを検討し始めると、まず導入事例を探すことになります。ただ、「待機時間が◯%減った」という数字だけを並べても、自社に当てはまるかは判断できません。事例は、どんな課題を解いたものか、成果の数字が何なのかで分けて読むと、自社に近いものが見えてきます。この記事では、事例の読み方の軸と、TruckCALL™ の2つの導入事例を整理します。
バース予約システムの導入事例とは
ここでいう導入事例は、拠点に入るトラックの受付・順番付け・呼び出しを仕組みに置き換えた企業が、導入前の状況と導入後の変化を公開したものです。読み手にとっての価値は、自社と同じ悩みを持つ現場で、何が変わったかを先に知れることにあります。
事例を読む目が変わってきた背景には、法改正があります。国土交通省は物流効率化法の目標として、1運行の荷待ち時間・荷役等時間を2時間以内、1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内にすることを示しています。一定規模以上の特定事業者には、2026年度から中長期計画の作成や定期報告などが義務づけられます。事例を読むときも「待ちが減ったか」に加えて「記録が残るようになったか」を見る必要が出てきました。
導入事例の分類
事例は、次の二つの軸で分けると比べやすくなります。
課題の型で分ける
| 型 | 導入前に起きていること | 事例で見るべき成果 |
|---|---|---|
| 路上待機・近隣影響型 | 敷地内に待機場所が足りず、順番待ちの車両が路上に並ぶ | 路上待機の台数、近隣からの苦情 |
| 受付・呼び出し負荷型 | 紙の受付や電話・口頭の呼び出しで、スタッフの手が止まる | スタッフの作業の変化、コスト |
| 記録・可視化型 | 荷待ち・荷役の時間を正確に残せない | 何の時刻が残るか、何に使っているか |
実際の事例は、一つの型だけで説明できることはまれです。自社の一番の痛みがどの型かを先に決めておくと、事例のどこを読めばよいかが定まります。

成果の根拠の種類で分ける
- 実測値 — 導入後に実際に測った結果。測定の期間・対象・導入前後の条件をあわせて確認する
- 見込み値 — 導入時点で期待している効果。導入の判断材料にはなるが、実績とは分けて読む
- 利用者の声 — 現場やドライバーの感想。定着のしやすさを測る材料になる
実測値にも注意点があります。後で紹介するキョーワ株式会社の事例では、導入前は手書きの記録が中心で、キャンセル率と立ち去り率について導入前は正確な数字を取れていなかったため比較は難しいと語られています。比較の起点が無い数字は、導入後の水準として読みます。
事例を読む前に決めること
事例を集める前に、自社側で決めておくことが四つあります。
- 一番の課題の型 — 路上待機か、受付の負荷か、記録か
- 何の数字で比べるか — 1台あたりの荷待ち時間なのか、路上待機の台数なのか、受付に取られている人手なのか
- 導入前の数字を今から取るか — 手書きでもよいので、比べる起点を残しておく
- 使えない人をどう扱うか — スマートフォンを持たないドライバーのために、従来の受付を残すかどうか
特に3は、導入後に取り返しがつきません。 起点の数字が無いと、導入後の実測値がどれだけ良くても、変化として説明できなくなります。受付方式そのものの比べ方はトラック予約受付システムの選び方、枠の配分などの運用はバース予約の運用設計で扱っています。
業種別の勘所
国土交通省は、荷待ち件数が特に多かった輸送分野として加工食品、建設資材、紙・パルプの3分野を挙げ、分野ごとに懇談会を設けてガイドラインを策定しています。事例を探すときは、自社の分野のガイドラインも参照できます。
- 建設資材 — 天候や設計変更で搬入計画どおりに進まないと荷卸しスペースにトラックが集中し、多品種で物件ごとに製品が異なるため作業が長くなる、と国土交通省は整理しています。NX総合研究所が紹介するガイドラインの事例では、大規模な建設現場で納品業者が搬入を予約する運用に見直したことで、荷待ちや持ち戻りが激減しました。1現場あたりの省力化効果は、元請業者で月180時間、下請業者で月240時間、納品業者で月50時間とされています
- 建設現場向けの資材・機材のレンタル — 資材や機材を積み下ろすトラックが営業所やセンターに集中しやすい業種です。路上待機・近隣影響型の事例が当てはまりやすいので、路上の台数を成果に挙げている事例から読むのが近道です
- 複数拠点 — センターによって敷地の広さや周辺環境が違います。1拠点の成果ではなく、拠点ごとに運用をどう変えたかが書かれている事例を選びます
TruckCALL での実例
TruckCALL の導入事例は、現在2つを公開しています。どちらも建設現場向けの資材・機材をレンタルする業種で、課題の型と数字の種類が異なります。詳しくは導入事例の一覧からご覧いただけます。
キョーワ株式会社(実測値の事例)
繊維仮設資材の開発・製造・販売・レンタルを手がける同社は、全国支店・主要センターに TruckCALL を導入しました。導入前のセンターでは、多い時で1日最大100台ほどのトラックが出入りし、受付待ちが20台ほどになることもありました。敷地内に待機場所が無く、順番待ちの車両が路上に並び、近隣からのクレームにつながっていた、典型的な路上待機・近隣影響型です(路上待機の対策そのものはトラックの路上待機を止める対策で扱っています)。
| 指標 | 導入後の結果 |
|---|---|
| 全国主要センターの平均待機時間 | 約2時間 → 約30分(75%短縮) |
| 事例で取り上げたセンター周辺の路上待機トラック | 0台 |
| 近隣クレーム | ゼロ |
| キャンセル率と立ち去り率の合計 | 約1% |
同社は自社開発も検討しましたが、ベンダーからは最低でも数千万円ほどかかると言われ、現場の運用に応じて改修できるパッケージを選んでいます。定着の面では、LINE を使わないドライバーのために従来の受付方法を残し、チラシを配りながら試してもらうところから始めました。導入後は車両台数や受付から接車までの時間、車両の大きさを確認できるようになり、実績に基づいて拠点ごとの人員配置を判断するところまで使い方が広がっています(キョーワ株式会社の事例)。
マツオカ建機株式会社・アシタル株式会社(見込み値の事例)
ミライリスホールディングスグループの2社は、紙の受付と、電話や口頭による呼び出しが中心の運用でした。課題として挙げられていたのは、受付対応による事務所スタッフの業務中断、ドライバーの「いつ呼ばれるか分からない」という待機ストレス、正確な荷待ち・荷役時間の記録が難しいことの三つです。受付・呼び出し負荷型と記録・可視化型が重なった事例といえます(紙と電話の受付の見直し方は物流センターの受付業務を効率化するにはで扱っています)。
期待される効果として、年間約190万円以上のコスト削減効果の見込み、ドライバーの不安やストレスの軽減、受付業務の省力化・対応時間の短縮が示されています。導入の決め手は、従業員が日常的に使い慣れている LINE をそのまま使えることでした。この190万円は導入時点の見込みであり、キョーワ株式会社の数字とは性質が違う点に注意して読んでください(ミライリスホールディングスの事例)。
2つの事例を並べると、同じ業種でも、導入時の主な課題と、示されている数字の性質が異なります。自社の課題の型と比べる数字を先に決め、近い事例を読み込むことが、導入後の効果を見誤らない一番の近道です。
